甘い恋じゃなかった。








(半ば恐喝され)買ったはいいものの。



これを…一体私にどうしろと…!




「何してんだよ」


「!!!」




振り向くと怪訝な顔した桐原さんがすぐ後ろに立っていた。


慌てて下着が入った袋をクッションの下に隠す私。



「きりっ桐原さん!?後ろに立つときは立つって言ってくださいよ!?」


「はぁ?何言ってんのお前」



頭をゴシゴシかいて、桐原さんがドカッと私の隣に腰かける。



「今日は早かったんですね、仕事」


「んー、まぁ。明日定休日だし」


「そうですか。あ、私お風呂沸かしてきますね?」




そして逃げるようにその場を後にした。



脱衣所にかけこんで、ホッと胸を撫でおろす。



よかった、下着を袋から出していなくて。

あんな“ブツ”を桐原さんに見られたら最後、「うわ~俺今、豚に真珠って言葉の意味を猛烈に理解したわ」だの「え?貧乳がこんな下着似合うと本気で思ってるの?」だの「男いねーくせに(笑)」だのボロクソ言われるに決まっている。決まっているのだ。


だからあの“ブツ”は絶対に彼に見られないようにしなけらばいけない…。



そう決意し、私は浴槽の清掃に取り掛かった。





だが。そう。私はいつも爪が甘いのである。




< 181 / 381 >

この作品をシェア

pagetop