甘い恋じゃなかった。
(半ば恐喝され)買ったはいいものの。
これを…一体私にどうしろと…!
「何してんだよ」
「!!!」
振り向くと怪訝な顔した桐原さんがすぐ後ろに立っていた。
慌てて下着が入った袋をクッションの下に隠す私。
「きりっ桐原さん!?後ろに立つときは立つって言ってくださいよ!?」
「はぁ?何言ってんのお前」
頭をゴシゴシかいて、桐原さんがドカッと私の隣に腰かける。
「今日は早かったんですね、仕事」
「んー、まぁ。明日定休日だし」
「そうですか。あ、私お風呂沸かしてきますね?」
そして逃げるようにその場を後にした。
脱衣所にかけこんで、ホッと胸を撫でおろす。
よかった、下着を袋から出していなくて。
あんな“ブツ”を桐原さんに見られたら最後、「うわ~俺今、豚に真珠って言葉の意味を猛烈に理解したわ」だの「え?貧乳がこんな下着似合うと本気で思ってるの?」だの「男いねーくせに(笑)」だのボロクソ言われるに決まっている。決まっているのだ。
だからあの“ブツ”は絶対に彼に見られないようにしなけらばいけない…。
そう決意し、私は浴槽の清掃に取り掛かった。
だが。そう。私はいつも爪が甘いのである。