甘い恋じゃなかった。






リビングに戻ると、桐原さんは先程までと同じようにソファに座っていた。


でも、先程と違うのは、そんな桐原さんの手にはしっかりと私が本日(半ば恐喝され)購入をした下着が握られているということ。そして、それを真剣な瞳でまじまじと観察しているということ…!



「〇✕△@%$#!?!?」



声にならない悲鳴をあげながらそれを奪い取ると、桐原さんが「おぉ」と呑気そうに顔を上げた。



「俺はもうちょっとシンプル系のが好きだけど?」


「っはぁ!?なななな何言って!?ていうか何見てんですか!?」


「お前が物凄い思い詰めてたみたいだからさ。心配で」


「物凄い半笑いじゃないですか!!」



なぜ!なぜクッションの下に置きっ放しにしてしまったの私!?


あぁ一つだけ願いが叶うなら、今すぐタイムマシーンで5分前に戻りたい。



「なんなの、やっと男でも出来たわけ?」



「ちが、違います!これにはちょっと深い事情が…!」



まさか莉央に桐原さんと何もないことを心配されて、なんて口が裂けても言えない。



「ふーん。ま、どうでもいいけど」



怠そうに欠伸をする桐原さん。



「そういう下着つけるだけじゃ意味ねーからな。誘惑の仕方とかお前知ってんの?」


「…?」


「あ、ごめん、お前にはまだ百万年くらい早い話だったな(笑)」




くっ…よく分かった。とりあえず桐原さんが私を物凄くバカにしているということは分かったぞ。




誘惑の仕方?そんなの分かるわけないけど。

なんか悔しい。すごく悔しいからもうヤケクソだ。




ガバッ…



勢いのまま桐原さんにのしかかった。


馬乗りになった私の下で、押し倒された桐原さんが大きく目を見開いて私を見ている。



「あんまりナメてると、痛い目見るかもですよ?」




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