甘い恋じゃなかった。
暫しの沈黙。
私がハッと我に返ったのは、既に数十秒が経過したときだった。
わた、私何言っちゃってるの!?
慌てて桐原さんの上から退こうとしたそのとき、グ、と手首をつかまれて今度は私が押し倒される。先程までとは完全に上下逆転した体制で、桐原さんがク、と笑った。
「ふーん。痛い目って例えば?」
「そ、それは!……考えておきます」
「何だよそれ」
桐原さんの顔が近い。
彼の瞳に私が映っているのが見える。
桐原さんの目って、茶色いんだな…。
即座にこの体制から脱したいはずなのに、なぜだか彼の瞳に見入ってしまう自分がいて。
「なに、じっと見て。発情期?」
「っはぁ!?何言ってるんですかバカなんですか!?」
手首をつかまれているため額で頭突きしようとしたら、ヒョイッと桐原さんが私からおりた。
「なんだ。急にエロい下着買ってくるし押し倒してくるし顔赤いし、てっきりそうなのかと」
「違 い ま す!!」
もう!やっぱりこんな下着買うんじゃなかったよ!!!