甘い恋じゃなかった。




その日私は浮かれていた。



なんたって、駅前の人気パティスリー【ボヌール】の看板メニュー、ショコラフランボワーズ――仕事帰りにダッシュで立ち寄ってもいつも売り切れている――の最後の一個を、奇跡的にゲットできたのである。



神様!!



私は星が瞬き始めた夜空を見上げ、その遥か彼方にいるであろう神に語りかける。



こんな私のためにボヌールのショコラフランボワーズを奇跡的に売り残して頂きありがとうございます!

きっと、毎日毎日コンビニでお釣りを募金し続けた徳を、今更になって報いて下さったのですね。本当にありがとうございます。




私は小躍りしたい衝動を堪えながら、ショコラフランボワーズを大事に抱えて家路を急いだ。




でも、その時の私はまだ知らなかったんだ。




まさか、このすぐ後に、とんだ受難が待ち受けているなんて。





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