甘い恋じゃなかった。
さぁ、ここからは私の一番好きな作業。
3枚にスライスしたうちの一枚のスポンジケーキに、はけでシロップを塗っていく。
続いてホイップした生クリームをパレットナイフで全体に広げていく。
そこからは輪切りにしたいちごをのっけて、またホイップクリームを塗って、スポンジをのっけて…の繰り返し。
均一になるように注意しながら生クリームでサイドをコーティングしていると、なんだか建築家になったような気分だ。ケーキという、塔をつくる建築家。
最後に冷蔵庫で30分ほど冷やしたケーキの表面に、クリームの飾りを絞って…大トリはもちろん、いちご。ポン、ポン、ポン、とバランスよく配置する。
…よし。
「できた…!」
いちごのショートケーキ。完成だ!!
いろんなケーキを食べるけど、作るのは断然、いちごのショートケーキが多い。
生まれてはじめて作ったケーキも、いちごのショートケーキだった。
達成感に満ち溢れながら、自作のそれを眺めていると
「…何やってんの?」
ふと、部屋の温度が下がった気配。
ハッと見ると、桐原さんが対面式キッチンの向こうで、怪訝そうに私を見ていた。
しまった。ケーキづくりに夢中になりすぎて、桐原さんの存在を完全に忘れてた。