甘い恋じゃなかった。
「か、帰れるの?二日酔いは?」
「してるよ。頭割れそうに痛いわ。
だからこの詫びはまた…今度な。悪かったな、色々迷惑かけて」
「あ…ううん」
そういえば桐原さんをゲロまみれにしたんだった。
その復讐で、さっきは、あんな牛奥をからかうようなこと言ったんだろうか。
「じゃぁまたな」
気まずそうな笑みを残して、牛奥は帰っていった。
桐原さんのことを話している最中、話してからも、牛奥、一度も私の目をちゃんと見なかったな。
軽蔑したんだろうか。
付き合ってもいない男と一緒に住んで、貞操観念がない女だと、軽い女だと思われたんだろうか。
ソファに寝転ぶ。
一人で住んでいた時とは違う、明らかに他人の気配を感じるこの部屋が、いつの間にか普通になってしまっていた。
でも傍から見ると多分。きっとおかしいよね、この状況。
だけど不思議と、そう思っている私がどこか、他人事に感じた。