甘い恋じゃなかった。
それはその日のお昼のこと。莉央と2人で、社食で昼食をとっている時のことだった。
たまたまお盆を持ち、キョロキョロとしている牛奥を見つけた。どうやら空席を探しているらしい。
ちょうど私の隣の席が一つ空いていたので、私はいつもそうするように声をかけた。
「牛奥!隣空いてるよ!」
私の声にビクッと反応した牛奥が私を見る。いつもだったら、「おーサンキュー」なんて言ってすぐに寄ってくるはずなのに。
「…あー…いや、いいや、今日は。向こうで一人で食うわ」
気まずそうに私から視線を外すと、そう言って遠く離れた席の方に歩いていってしまった、
……疑念が確信に変わった。どうやらやはり、気のせいではなかったらしい。
ズバリ私、
牛奥に避けられてます☆
「はぁぁぁぁ〜……」
「え、何急に。変じゃない?明里もアイツも」
突然大きなため息を吐き出した私を、莉央が不審そうに見た。
「…もしかして何かあったの?
あの飲みの後、牛奥と」
豚の生姜焼きを頬張りながらそう聞く莉央の目がキラキラ、いやギラギラと輝いている。
…なんだか物凄く変なことを期待されていそうな気がする。
「…いや、あの。実は…」
私は莉央に、飲み会の後のことを詳しく話した。