甘い恋じゃなかった。
周りの音が何も聞こえなくなる。
…好き?
牛奥が私の、こと?
「そ、それは「言っとくけど同期としてとかそんなんじゃねぇからな」
私が言おうとしたことを遮って、牛奥が少し睨むようにして言う。
「…あ、そう。違うんだ、ハハ…」
同期としてじゃなかったら…何?と考えてみるけれど、思いつく答えは一つしかなくて。
やばい。どうしよう。
経験値が少なすぎて、こんな風に言われたこともないし、そしてそれをまさか、牛奥から言われるとは思っていなくて。
「……」
「おいっ、何後ろ向いてんだよ」
そ、と背を向けると、後ろから焦ったような声が飛んできた。
「ち、違う。ごめん。今、絶賛パニック中。今考える。考えるから、少し待っ…」
「今じゃなくていい」
トン、と背中から暖かい温度に包まれる。私の前に回された腕。すぐ耳元で牛奥の声がする。
「知ってるよ。小鳥遊が俺の気持ちに1ミリも気付いてなかったのも、俺のこと男として全然見てなかったのも。
だから今じゃなくていい。ただ、考えて。俺のこと、同期じゃない。一人の、小鳥遊のこと好きな男として、考えて欲しいんだ」
後ろから抱きしめられていた腕がそ、と解かれる。
ゆっくり向き直ると、優しい目をした牛奥がいた。
「俺待ってるから」