甘い恋じゃなかった。
「ただいま〜…」
「遅かったな」
家に帰ると、桐原さんがヒョコッと洗面所から顔を出した。その口には歯ブラシ。どうやら歯磨きをしていたところらしい。
「え…そうですかぁ?」
フワフワしたままソファに腰掛ける。なんだかさっきから、体が少しだけ宙に浮いているように落ち着かない。
「何ボーッとしてんだよ。何かあったのか?」
歯磨きを終えた桐原さんが、洗面所から戻ってきて怪訝そうに隣に腰掛ける。
「何かっていうか…」
“好きだ‘”
「や、違いますから!別に慣れてない告白とかされて浮かれているわけじゃ…!」
「ふーん。されたんだ、告白」
ハッとして見ると、桐原さんの口角がバカにしたように少し上がっていた。
何!私自分からカミングアウトしてるの!!