甘い恋じゃなかった。
「で、相手は」
ズバリ切り込んでくる桐原さん。
「え、えっと…」
「牛奥だろ、どうせ」
「え!?何で分かるんですか!?」
「…お前って本当鈍いよな」
ゴツ、と呆れたように頭を軽く小突かれた。
鈍い…のか?私。
まぁ我ながら鋭い方ではないと思うが…。
「で、何て返事したんだよ」
「…返事は…してません、まだ」
「は?」
「牛奥が返事は今じゃなくていいからって言ってくれたんで…待つから、って」
「…ふーん」
やばい。話しているうちに、どんどん顔が熱くなってきた。恥ずかしい。猛烈に恥ずかしいぞ、これは。
恐らく真っ赤になっているであろう私の横顔をじ、と見つめてくる桐原さん。
どうせ、告白されたくらいでこんなに真っ赤になるとかバカかよ、なんて思っているんだろう。
仕方ないじゃないか、なんせ経験がない。恋バナを聞く立場にはなっても、話す立場になんて滅多になることがなかったんだから。
「ど、どうしたらいいですかねっ?」
私は開き直って彼に相談してみることにした。何か言わないと、恥ずかし過ぎて沸騰死しそうだ。
「…は?」
「し、正直分からないんです自分の気持ちが。牛奥のことは好きだけど、同期としてなのかそれ以上なのか基準が不明っていうか。
避けられたときはすごく嫌だったけど、でもだからってお、男として?好きなのかと言われると…」
「ガキかよ、お前」
むす、と桐原さんが不機嫌そうに腕組みをしてソファに踏ん反り返る。
「知らねーよお前のお子ちゃま恋愛事情とか。いちいち俺に言うんじゃねぇ」
はっ…
はぁ!?