甘い恋じゃなかった。
切り捨てるようなその言い方にカチンときた。
お子ちゃま恋愛事情、ですと!?
「はじめに根掘り葉掘り聞いてきたのはソッチじゃないですか!」
「誰も根掘り葉掘りなんて聞いてねーよ」
「聞いてましたよ!」
「だから聞いてねぇって!」
「もう、何でそんなに怒ってるんですか!?」
はた、と桐原さんの動きが止まる。
「怒ってる…?俺が?」
「はい。すごいムスッとした顔してますけど」
「…何で」
「知りませんよそんなの!」
桐原さんが不可解そうに眉をひそめる。
「…意味が分かんねぇ。俺が怒る理由とか何一つも無いし」
「ですよね。だから何で怒ってるのかって聞いてるんですけどね」
「だから、怒ってねぇって!アホか!」
吐き捨てるようにそう言って立ち上がった桐原さんが、寝る!と宣言して自室のドアを開けた。
バンッ!!とどう考えても必要以上の力で閉められたそれが大きな音をたてる。
…めちゃくちゃ、怒ってるじゃん。アホか!
「あぁ、イライラする!」
行き場のないイライラを持て余した私はゴロンとソファに寝転んでみる。
さっきまでは何となく高揚したフワフワとした気持ちだったのに、一気にそこから突き落とされた気分だ。
…桐原さんのバカ。アホ。
もう少し話聞いてくれたっていいじゃないか。