甘い恋じゃなかった。
「いいじゃない。これも店の為だと思って!ね?」
パンパンッ!と神社か何かにでもするように俺に手を合わせて拝んでくる師匠。
「そんなことしなくたって、客足は十分伸びてるじゃないですか」
「キララくんが働き始めてからね〜」
…師匠は誤解している。
確かにきっかけは俺だったかもしれない。俺はどうやら、女に好かれやすい顔をしているらしいし。
でもそれは単なるきっかけだ。
ちょっとした街のイケメン見たさに集まった客が、着実にリピーターとなっているのはここのケーキの味が良いからに他ならない。
ここのケーキが、師匠の腕が、認められている証拠だ。
「俺はね、キララくんのプロマイドがついてくる!っていうのも中々悪くないと思うんだけどね?」
だけど、そんなことにも気づかず師匠は真剣に頭を悩ませているようだ。
…あー。なんだ?鈍いのか?
…まるでどっかの誰かさんみたいだな。