甘い恋じゃなかった。
見てしまったら余計に眠れなくなるような気がしたが、私はつい、枕元のスマホに手を伸ばしてしまった。
ホームボタンを押すと、強烈な光がすっかり暗闇に慣れた目を襲う。
AM 1:00
ガクッと項垂れ、スマホを閉じた。
あぁ、早く寝ようと思ったのに。
はぁぁぁぁ、と深いため息をついた時、ガチャガチャと玄関の方で物音が。
「…うわっ、起きてたのかお前」
リビングに入ってきた桐原さんが、暗闇の中布団の上に座る私を見て驚いた声をあげた。
パチ、と電気がつけられる。
眩しくて、おお、と目を細めた。
「…遅かったですね、桐原さん」
桐原さんに会うのは少し久しぶりだ。
最近は桐原さんの仕事が遅かったり、私も残業だったりとすれ違い生活だった。
特に最近は、桐原さんの帰りが異様に遅いのが目立つ。
「あー…まぁ、少し考え事してて」
「えっ?新作ケーキのですか??」
「…色々だよ、色々!
つーかお前は何してんだよ。早く寝ろよ」
「…眠れないんですよ。私も色々考えることがあって」
「……あっそ。お前まだ返事してないのかよ?」
どうやら私が牛奥のことで悩んでいるというのはお見通しのようだ。
「…はい」
「…ふーん」
そう言う桐原さんの表情は、ちょうどそっぽを向いていて分からなかった。