甘い恋じゃなかった。
「で、どうする?明里ちゃんも並んでく?」
「え、いや、私は…」
「じゃぁさ悪いけどコレ持っててくれる?僕店の中行かないといけないから!じゃ!」
「は!?ちょ、店長…!」
無理矢理私に看板を押し付けると、店長は颯爽と店の中に入っていってしまった。
その間にも続々とお客さんがやってくる。
「何分待ちですか?これ」
いや、ちょっとわかりません…。
「ファストパスとかないんですか?」
デ〇ズニーじゃねぇよ。
そんな感じで続々と増えていく。
「や~っ!キララ王子、ほんっとカッコよかった!!」
店の中から出てきたお客さんの会話が耳に入ってきた。
「もう王子っていうかアレだね、神だね!」
うわお、すごい昇格だな…。
「キララ王子手作りっていうカボチャプリンもゲットできたし、食べるの楽しみーっ!」
なんだって!?
思いがけない情報に、私は素早く店の中のケーキが入っているガラスケースの中をチェックする。
あった、あった。いつものケーキたちに交じって、見慣れないプリンが!桐原さん手作り!?それは食べないわけにはいかない!!
と、同時に猛烈な不安に襲われる。
まだプリンは結構残っているように見える。だけど、この人数。もしかしてこの行列が終わる頃には売り切れてしまっているのではないだろうか…?
その時、再び新たなお客さんがやってきた。
看板を持っている私を完全にスタッフだとみなし、私の前に並ぼうとする。
「す、すみません!」
慌てて言った。
「私も、並んでます」