甘い恋じゃなかった。
思い切って、その部屋の扉を開けた。
綺麗に片付けられた部屋。というより何もなくなっていた。荷物はしっかりまとめて出て行ったらしい。
こうして何もなくなったガランとした部屋を前にすると、桐原さんとの毎日はまるで嘘だったような、夢だったような。そんな気持ちになる。
「…あー、広い…」
ゴロンと部屋の真ん中に寝転んでみた。なんだか以前より天井が高く感じる。広く感じる。
…グウ、とお腹が鳴った。
こんなに虚無感に満たされていても、お腹はしっかりとすくらしい。そんな事実に少し感心してしまう。
「…甘いもの、食べたい」