甘い恋じゃなかった。
「…食えんの?これ」
彼が食卓に並んだ卵粥を見下ろして、そんな失礼なことを言った。
「食えますよ」
「…あんなクソマズいケーキ作った女のことは信用できねぇ」
改めて“クソマズい”という言葉にダメージを受ける私。自分の中ではむしろ成功した方だったんだけどな…。
でも、あんなにおいしいケーキを作られてしまうと、何を言われても仕方がないなという気もする。
「…これはおいしいですよ!」
そんなわけで、私はそう反論することしかできなかった。
「………」
疑わし気な瞳で桐原さんが私を見る。
だけどやっぱり空腹には勝てなかったようで、渋々スプーンを持つとお粥を口に運んだ。
恐る恐る、といった感じでモゴモゴと咀嚼して。
「……うまい」
ゴクリと飲み込んでから、意外そうにそう呟く。
よしっ!!
「でしょ!?」
嬉しくて身を乗り出すと、ギロリと威圧的な視線が返ってきた。あーごめんなさい調子乗りました。