甘い恋じゃなかった。





「…私、本当に知らないんですけど」



恐る恐る何度も申し上げていることを再度申告すると、彼が微かに眉をひそめた。



…ようやく信じてくれたのだろうか。




「じゃぁ」




帰るよ。



そんな言葉を期待していたのだが、甘かった。甘すぎた。




「お前が償えよ」



「…え?」



「償え。
栞里の代わりに」





…お姉ちゃんの代わりに、私が償う。




………一体何をさせられるというんだ!?




あまりの恐怖に顔がひきつった私を前に、彼はいたって真顔で告げた。





「ここに住ませろ」



「…は?」



「実は。あの結婚式の後、失業した。アイツのせいでな」



「…え、お姉ちゃんのせいって何で…」


「うるせーな、とにかくアイツのせいなんだよ黙って聞け!」



バンッ!


彼が卵粥がのったローテーブルを勢いよく叩く。



怖い!!





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