甘い恋じゃなかった。







遊園地デート、当日。



私はソワソワしながら、遊園地の入園ゲート前で桐原さんを待っていた。


こうやって外で待ち合わせてどこか行くなんて、夏祭り以来だ。



ちなみに桐原さんは私のマンションを出た後、ミルフィーユ近くのアパートで一人暮らしをしているらしい。

ちなみにまだ行ったことは、ない。



どうしよう、もしも、もしもよ?今日帰りに、寄ってけよとか誘われちゃったりしちゃったら「おい何一人でニヤついてんだよ」


「きりっ桐原さん!!」


いつのまにか、目の前に仏頂面の桐原さんが立っていた。


「悪い。待ったか?」


「いや!全然!今来たところです!!」



なんて言いつつ、私の視線は桐原さんの白いTシャツに、大きく書かれた“勝!”という字に釘付けになる。


「そ、そのTシャツは…?」


部活の高校生以外で着てるの見たことないんですけど…。



「あぁ、いいだろ。今日の俺の気分だ。」


「勝つって何に…?」


「…いいから、行くぞ!」



グイ、と桐原さんが私の手を取って歩き出す。


って!


今ナチュラルに手、手繋いっ…!



振り向いた桐原さんが、あまりのことに口をパクパクさせる私を見てぶ、と吹き出した。



「酸欠の魚かよ」

「さっ…!?」

「デートなら普通だろ?」




どうしよう。


もしかしたら今日一日、心臓もたないかもしれない。




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