甘い恋じゃなかった。




「はぁ〜………」


「ため息なんてついちゃって、マリッジブルー?」



お昼休み。

恒例の社食にて。



天ぷらそばのホクホクとした湯気の向こうで、ニヤニヤとした視線を送ってくる莉央。

その隣で、ミックスフライ定食を食べていた牛奥が箸を落とす。



「は!?もう結婚すんの!?」



桐原さんと付き合ったことは、牛奥と莉央にはすぐに報告した。

牛奥とは気まずくなってしまうのかと思ったけど、こうして普通の同期として相変わらず仲良くしてくれている。本当にありがたい。


しかし、今は全く的外れである。



「違うから。誰がマリッジブルーよ、誰が」



心なしかホッとした顔をする牛奥の隣で、莉央が「じゃぁ何なの?」と不思議そうに眉をひそめる。



「……実は…」



私は2人に、桐原さんの元婚約者である姉が突然現れたことを話した。




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