甘い恋じゃなかった。
「お、おまえっ…驚かすんじゃねぇよ!」
「す、すみません…名前呼んでも気付かなかったんで」
あまりの桐原さんの驚き様にこちらまでビックリだ。心臓がバクバクしている。
「つーか何でここにいるんだよ!?クローズになってただろうが」
グイ、と親指で桐原さんがドアの方を差す。
「そうなんですけど…、まぁいっかなって」
「んだよそれ、ふざけんなよ」
ブツブツと悪態をつきながら、再び椅子に腰をおろす桐原さん。
「悪いけど俺今忙しいから、もう帰れ」
そして腕組みをし、「あー」とか「うーん」とか言いながらまた難しい顔して何やら考えこみ始める。
「…やっぱり気になってるんですね。昨日は関係ないとか言ってたくせに」
「…はぁ?」
ぶっきらぼうに視線を上げる桐原さん。
「何言ってんのお前」
「何言ってんのじゃないですよ!そんなに思い詰めるなら、私にだって一言相談とかあってもいいんじゃないですか?」
「は、何でお前に相談しなきゃいけねーんだよ」
「な、何でってそれは」
「お前に何かいいクリスマスケーキのアイディアでもあるわけ?」
「そりゃ私だってクリスマスケーキ……は?クリスマスケーキ?」
たった今まで私は桐原さんとお姉ちゃんの話をしていたはずだ。それがなぜ突然、クリスマスケーキ?