甘い恋じゃなかった。
「…おいしい」
オムライスは見た目だけではなく、味も完璧だった。素直に零れたその言葉に、お姉ちゃんが嬉しそうに笑う。
「そう?よかった」
「…うん」
チ、チ、チ、と時計の針が動く音がいつもよりも大きく聞こえる。
…どうしよう。会話が続かない。
今思い返せば、お姉ちゃんとこうして二人きりになることはあまりなかったように思う。
うちは母親が専業主婦だったこともあり、いつも誰かしらがうちにいたし、お姉ちゃんは中学生くらいになると、友達と遊びに出かけることが多くて、あまり家にいなくなった。
ずっとお姉ちゃんは私の憧れだった。
社交的で、美人で、男女問わず友達が多くて、私と違って絶えず彼氏がいて。
ずっとお姉ちゃんみたいになりたかった。
…だけど…
「…どうしてきぃくんと付き合うことになったの?二人、何も接点なんてなかったでしょ?」
沈黙を破ったのはお姉ちゃんだった。
顔を上げると、お姉ちゃんの綺麗な茶色がかった瞳と目があった。
…どういうつもりでしてるんだろう、この質問。だけどお姉ちゃんの瞳からは、純粋に興味という感情しか読み取れない。
「…それは…来たの。桐原さんが、ここに。突然」
「ここに?」
「…うん。お姉ちゃんを、探しに」
「…そっか」
「…うん」
また、沈黙。
沈黙が重い…。