甘い恋じゃなかった。
「お姉ちゃんは…なんで」
「ん?」
勇気を出して私も口を開いた。もうこの際だ。気になることは聞いてしまおう。
「何で今の旦那さんと…離婚しようなんて思ってるの?桐原さんとの結婚ダメにしてまで追いかけるくらい、好きな人なんじゃないの…?」
「……うん」
お姉ちゃんがオムライスを食べる手を止めて、何か考えこむように少し間を置いた。
「好きだよ。すごく好き。だけど…時々思うんだよね」
「……何を?」
「………」
お姉ちゃんは一瞬ふっと目を伏せた後、「私ね」と再び顔を上げた。
…ずるい、お姉ちゃん。肝心なこと今、はぐらかした。
「…きぃくんに謝りにいこうと思う。ちゃんと」
「………」
「連れてってくれる?きぃくんのところ」
桐原さんとお姉ちゃんを…
「お願い明里。じゃないと私、前に進めない」
お姉ちゃんの真剣な、あまりに真剣な瞳に、気付いたら
「………わかった」
深く頷いてしまっている、私がいた…。