甘い恋じゃなかった。
♡もやもやジャスミンティー






というわけで。


「めっ………ちゃ、美人ですね!?なんていうかもう神々しい!?美しいというか最早芸術!?え!?芸能人ですか!?ていうか神ですか!?女神ですか!?」


「店長落ち着いて」


土曜日、私はお姉ちゃんを連れてミルフィーユに来ていた。


美人に激弱な店長が猛烈に感動している。



「ていうか離れてくれます?すごい近いんですけど」


必要以上に至近距離からお姉ちゃんを見つめる店長を無理矢理引き剥がすと、「明里ちゃん!」とガシッと両手で手を握られた。うわちょっとかなり物凄くキモい。


「この猛烈に美しいお方はどなた!?お友達!?」

「いえ、あの…姉ですけど。私の」

「姉!?」


白目をむきそうなくらい驚いている店長。


悪かったな似てなくて!!


「そ、そうでしたか…!」


クルリと身を翻した店長が、今度はガシッとお姉ちゃんの手を握った。


「大変失礼致しました、お姉さま。平素より妹様には格別なお引き立てを賜っておりまして…!」

「いや私は取引先か?」

「まさか明里さんのお姉さまにこんなところで偶然出会えるとは!」

「いや偶然ではないですけど、私が連れてきたんですけど」

「これも何かの縁!おひとつケーキでも…!」

「あーもう、ちょっと来てくださいこっち!」



いつまでもお姉ちゃんの手を握っていそうな店長を再び引き剥がし、離れたところへ連れていった。



「桐原さんはどこなんですか?全然姿が見えないですけど」



そう、今日の目的はあくまで桐原さん。
呑気に店長の口説きを見物している場合ではないのだ。



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