甘い恋じゃなかった。




私と莉央が勤めているのは、国内でも割と大手の保険会社の本部。


そこで契約引受の査定業務をしている。



同期は何十人もいたけれど、同じ部署に配属されたのは私と莉央二人だけで。当然、同期の中でも一番仲が良い。





「よし、今日も終わったー」




午後6時半。定時である。


パソコンを閉じた莉央が、さっそく手鏡を取り出し口紅を塗り直し始めた。




「なに、これから彼氏とでも会うの?」



「まぁね」



「火曜日から元気だねぇ」




莉央には三ヶ月前から付き合っている彼氏がいる。といっても、社会人になってから既に五人目の彼氏である。

その可憐な容姿で引く手数多の莉央だが、彼氏のスパンも早い。

別れの理由を聞くと束縛が酷いだとかイビキが五月蝿いだとか様々で、共通しているのは、莉央からフって終わっているのがほとんどだということ。



「今日はどこ行くの?」


「えっとね、最近駅前に出来たフレンチ」


「あー、あの綺麗な!いいなぁ」




彼氏と駅前でフレンチディナーかぁ。



それに比べて私は…。





はぁ、と漏れるため息。




憂鬱だ…。





< 33 / 381 >

この作品をシェア

pagetop