甘い恋じゃなかった。
というわけで。
土曜日、私はさっそくミルフィーユへやってきた。
最近仕事が立て込んでいて、なかなか平日の仕事終わりにくることが出来なかったのだ。
よし、今日は言いたいこと、ちゃんと言おう。よし!
と気合いを入れてドアを開くと。
「いらっしゃいませー!」
カランコロンという鈴の音と威勢のいい店長の声…ではなく、朗らかな女性の声が出迎えてくれた。
赤いエプロンをつけたお姉ちゃんが、お盆片手に私に駆け寄ってくる。
「明里!来てくれたんだ」
「あ、うん…ていうかお姉ちゃん、なんていうかもう完全に馴染んでるね…」
「えー、そう?席カウンターでいい?」
「うん…」
お姉ちゃんに案内されるままカウンターの席に腰掛ける。
お姉ちゃんは笑顔でテキパキとよく動き、働いていた。
お姉ちゃんは昔から、何でも卒なく器用にこなしてしまうのだ。
「いやー、最高だよ!栞里ちゃん」
水を運んできてくれた店長が満足気に言う。
「美人だし仕事できるし、なによりその場にいてくれるだけでパッと雰囲気が明るくなるんだよね〜!」
「…そうっスか」
そりゃそうでしょ。だって私のお姉ちゃんなんだから。