甘い恋じゃなかった。
「ったく、この忙しい時に何?」
ブツブツ文句を言いながら莉央が電話に出る。
「もしも…」
『もしもし!?お前ら今どこ!?』
スマホから牛奥の無駄にでかい声が漏れて聞こえてきた。
莉央がうんざりした顔をして耳から少しスマホを離す。
「どこって、まだランジェリーショップだけど?」
『はぁ?嘘だろ?どんだけ人待たせば気済むんだよ!』
「ちょ、大声出さないでよ耳痛い!女の買い物の5分や10分黙って待ちなさいよ、みっともない」
『何が5分や10分だ!?もう30分以上余裕で待ってんだよいいから早く来い!!』
そして一方的に通話は切られたようだ。
やれやれ、と莉央が肩をすくめた。
「仕方ない、じゃぁあとコレだけ試着したら戻ろっか」