甘い恋じゃなかった。
今日は仕事帰り、私と莉央と牛奥で近くのショッピングモールに来ていた。
飾られた大きなツリーや、店内に絶え間なく流れるクリスマスソングが、否応でもクリスマス気分を掻き立ててくる。
そのツリーの真下で、仏頂面で腕組みをする牛奥の姿が見えた。
ごめんごめんと謝りながら駆け寄ると、「おい!」と予想通り吠えた。
「おせぇ。マジでおせぇ!」
「ごめん。でも女の買い物が遅いのは当たり前でしょ?これだから童貞は」
やれやれと、莉央がアメリカ人のような大袈裟な仕草で肩をすくめる。
「今童貞関係ねぇだろ!つか童貞じゃねぇし!」
「あーもういちいち大声出さないでよ」
「ていうか買い物するなんて聞いてねーよ!俺は美味い焼鳥が食べれるっていうから」
「へぇー。それ誰に聞いたの?」
「お前だ!!」
まるでコントのようなやりとりをしている2人。最近、この2人が前にも増して仲良くなっていると思うのは気のせいだろうか。
「まぁまぁ、私も莉央も服買ったことだしそろそろ焼鳥行こうよ」
ようやくコントをやめた2人はその言葉にニッコリ笑うと
「「オッケー!」」
綺麗にハモった。
…うん、やっぱり仲良いわ。