甘い恋じゃなかった。
「…仲良いね」
そんな私と桐原さんを黙って見ていたお姉ちゃんが、ポツリと、呟くように言った。
「お、お姉ちゃん?今のどこを見てそう思ったの?」
今全然仲良し要素なかったよ?なんなら暴力ふるわれてたよ?
そんな私の質問には答えることなく、お姉ちゃんが「じゃ」と足を止めた。
「私、もうここでいいや。お邪魔みたいだし先に一人で帰るね」
「…は?待てよ」
桐原さんの手が、私の頭から離れた。
「女の一人歩きとか危ねーだろ。送る」
「…やっぱり優しいね、きぃくんは」
お姉ちゃんがふっと笑って、桐原さんに歩み寄る。そして、そっと桐原さんの頬に触れた。
頬に…触れた!?
「なんか付いてた」
硬直する私の目の前で、お姉ちゃんは優雅に笑っている。桐原さんも少し驚いたようだったけど、「おぉ…悪いな」なんてお礼なんて言っていた。
お姉ちゃんが帰った後。
「…おい。せっかくだしどっかで茶…」
私を振り向いた桐原さんが、ギョ、とした顔をした。
「お前。何だその般若みたいな顔」
「…はい?そうですか?」
「何怒ってんだよ」
「怒ってないですけど。どっかで茶ですね、参りましょうか」
「待てよ」
桐原さんが歩き出そうとした私の手首をつかむ。