甘い恋じゃなかった。



「そっ…か」


栞里が俺から少し離れて、鼻をすすった。


「やっぱりきぃくん…変わったね」

「変えたのはお前だよ、栞里」

「え?」


栞里の瞳が驚きの色を持つ。


「栞里のおかげで俺は…身に染みて分かった。離したくないなら、向き合わなくちゃダメだって。相手にも、自分にも」

「…うん」

「栞里。俺を捨てたことは正解だ。
何かを捨ててでも掴みにいった幸せに自信を持て。
その相手と自分を疑うんじゃねーよ」

「…きぃくん」



あの、取り残されたチャペルから。そのとき、俺ははじめて



「…幸せになれ、栞里」



栞里の幸せを心から願った。



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