甘い恋じゃなかった。
「あれ、明里帰ってたんだ?おかえりー」
仕事から帰ってきてどんよりと夕飯を食べていると、お姉ちゃんがお風呂から出てきた。
お姉ちゃんと一緒に、お姉ちゃんが愛用しているボディソープのバラの香りもリビングに流れ込んでくる。
「あー、うん。ただいま…」
あれからというもの、お姉ちゃんともうまく目を合わせられない毎日だ。まぁそれほど、顔を合わす時間も意外と少ないのだが…。
「あのさぁ」
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出したお姉ちゃんが、何の気ない様子で言った。
「きぃくんがすごい怒ってたけど」
「…え」
「電話何回もしてるのにシカトされてるって。なんかあったの?」
ギクーッ!!
「な、何もないよ…?ただタイミングが合わなくて…」
声が上擦らないように気を付けながらなるべく普通の調子で答えた。
「ふーん?そう?喧嘩でもしてるなら早めに仲直りしなよ。クリスマスも、もう明後日なんだし」
「そ、そうだね…」
そう、早いもので今日は12月23日。クリスマスはもう目前だ。
「じゃ、私寝るね。おやすみ」
「お、おやすみ…」
パタン、とお姉ちゃんの部屋(元々桐原さんが使っていた部屋だ)のドアが閉まる音と同時に、はぁ…と息を吐き出す。
“仲直り”、か…。