甘い恋じゃなかった。





「フンフンフ~ン♪」



気分がノッてきた私は、着々とシュークリーム作りの工程を進めていく。




鍋に牛乳、水、バター、グラニュー糖、塩を入れ沸騰させ、先にふるっておいた薄力粉と強力粉を木べらで混ぜ合わせていると、



「遅い!!」



桐原さんの怒声が飛んできた。



驚いた私は、思わず手を止め桐原さんを見てしまう。



まるで般若のような形相をした桐原さんは、益々その顔を険しくさせ、




「おっせーんだよ!ダマになんだろうが!もっとチャッチャカ混ぜろ!!」



「は、はいっ!」



「まだおせーよ!もっと早く!」



「は、はいー!!」




私は桐原さんに言われるがまま必死に手を動かす。




「よし、そんなもんでいい」




やっと合格が出た時には、手が棒のようになっていた。



ふぅ…とようやく一つの作業から解放されたことに安堵しつつ、ボウルにうつした生地に、溶いた卵を一気に加えたときだった。




「はぁ!?」



般若・桐原が発動!!




「おっまえ、何してんだよ!?」



「な、何って卵入れただけ…」



「卵は分けて入れるってその本に書いてねーのか!?」




私は手元に置いてあった“誰でも簡単☆おいしいお菓子の教科書”を確認する。




「確かに書いてありますけど、でもどうせ入れるんだから一気に入れても同じ…」


「何様だお前、お前ごときがルセット無視してんじゃねーよ」


「る、るせっと…?」


「一気に入れたらゆるくなったとき戻せねーだろ!アホかよ!?バカかよ!?」




わ、私…


何でこんなに怒られてるの!?





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