甘い恋じゃなかった。
「…これが何?」
「問題は、私と行ったことのない居酒屋のレシートってことよ」
…と言われても。誰かと居酒屋=浮気というのはさすがに早計すぎるだろう。
首をひねる私と牛奥を見て「だから!」と莉央が口調を強めた。
「よく見てよ、ストロベリーサワーとかピーチウーロンとか…私の頼みそうにもないお酒ばっかり並んでるでしょ!?」
そう言われてみると、確かにそうだ。
莉央はそういった甘い類のお酒は一切飲まず、とにかくビールが大好き。時々違うのを頼んでも焼酎とかが多い。
「絶っっ対、女」
追加のビールを受け取った莉央が断言した。
「だからって別に浮気とは限らねーだろ、現にお前だって俺と一緒に飲みきてんじゃん」
笑い飛ばす牛奥を、キッと莉央が睨みつける。
「アンタと一緒にしないで。牛奥はなんていうか、ほぼ女子だし!」
「え、そうなの!?」
衝撃を受ける牛奥。
「クソー!浮気男に乾杯~!」
ヤケになってビールを一気飲みしはじめた莉央を慌てて止めた。