甘い恋じゃなかった。
「ちょっと落ち着いてよ~。そんなに気になるんなら彼氏に直接聞いてみたら?」
「…勝手に財布覗いたなんて言えないもん」
「だからってお前、何にも言わずシカトとか不機嫌になるとか本当やめろよ?
女のそういう“言わないけど察しろ”的やつ?ほんとメンドーなんだよな」
やっぱ言葉にしなきゃダメだよな、何事も~。としみじみしながら枝豆をつまむ牛奥を、莉央はハ、と鼻で笑った。
「偉そうに…。好きな女に告白もできないヘタレのくせに」
「ブッ!」
突如むせはじめる牛奥!
「お、おまえ何言って…!」
「言葉にしなきゃ何事も伝わんないよ~?」
ニヤニヤしながらそう言う莉央に、牛奥の顔がどんどん青ざめていく。
「つ、つーか早乙女、お前何で知って…!?」
「言っとくけどバレバレだから。わっかりやすいよね牛奥って」
ね?と悪戯っぽく私にアイコンタクトしてきた莉央。パチ、とウインクされて、女の私でも「あ、可愛い」なんて思ってしまった。
「ていうか、なに、牛奥って好きな子いたんだ?誰?」
ワタワタしている牛奥に聞くと、今度はカッと顔を赤くした。
青くなったり赤くなったり忙しい奴だ。
「…ま、中にはそれでも気付かない鈍感な女もいるみたいだけど?」
よかったね牛奥、あんたの幼気な恋心がバレてなくて…と慰める莉央の手を振り払って、牛奥が吠えた。
「うっ、うるせーな!やめろ労わるな!」
「なんか牛奥、カワイイ~♡」
「バカにすんな!!!」
私そっちのけで盛り上がっている二人。
…なんか仲間外れにされている気分だ。