甘い恋じゃなかった。
「な、な、な…」
「あ、やっぱ図星か」
「~~っ離して!」
桐原さんの手から逃れ距離を取る。距離を取り過ぎて背中がガタン、と玄関の戸にぶつかった。
「動揺しすぎだろ」
「な、だ、だって急に変なこと言うからっ…!」
「ハ、安心しろって」
桐原さんが近づいてきて、ドン、と私の頭上に手をついた。そして悪戯っぽく私の顔を覗き込む。ち、近くない…!?
「あんなキャラクターのお子ちゃまパンツ相手に、誰も欲情しねーよ」
「!? みっ…見たの!?」
「見たんじゃない、見えたんだよ」
不可抗力だ、と桐原さんが背後を顎で示す。
そこには開けっ放しの脱衣場があって、私のパンツが堂々と干されていた(ポムポムプリン付)。
あぁっ…そういえば今日の朝めちゃくちゃ急いでて、見えないところに置くのすっかり忘れてた…私のバカァア!!
今すぐ消えてなくなりたい衝動に襲われている私に、更に追い打ちをかけてくる悪魔・桐原。
「お前男いないからって気、抜きすぎなんじゃねーの?」
「う、うううううるさい!!!」
私は桐原さんを押しのけると、光の速さで干されていたパンツをタオルでぐるぐる巻きにして見えなくした。
「出てって!今すぐに!!」
「だから何度も言ってるだろ」
ハ、と呆れたように笑う桐原さん。
「お前が栞里の居場所さえ教えればすぐに出てくよ」
「……っだからそれは」
「おやすみ、プリンのお化けちゃん」
そして桐原さんは不敵な微笑みをのこして、自室に消えていった。
プリンのお化けって…
「これポムポムプリンだから!!」
その夜はパンツを見られたショックで、なかなか寝付くことが出来なかった。