甘い恋じゃなかった。
厨房の窓ガラス越しに、ロールケーキを作っている桐原さんの姿が見える。
その手つきは鮮やかで、目は物凄く真剣で。
流れるように作業が進んでいく。
こうして見ると、なんだか本当にパティシエみたいだ、桐原さん。
「…なぁ」
桐原さんの姿に見入っていると、隣の牛奥が話しかけてきた。
「あの人と…どういう関係なの?小鳥遊」
「え?どういう関係って、それは―――」
…なんて言ったらいいんだろう。
お姉ちゃんの元婚約者、とはなんか言いにくいし。
同居人とも絶対言いたくないし。
「……お友達?」
悩んだ末そう言うと、ギロ、と厨房の中から桐原さんに睨まれた気がした。
なぜ!