甘い恋じゃなかった。





その業界に全く詳しくなくても、スーシェフという言葉くらいは知ってる。たしか、厨房でシェフの次に偉い人のことだ。



しかもオンソレイユホテルは、日本屈指の超高級ホテル。芸能人の披露宴などにもよく使われているのをニュースで見る。



そんな所のスーシェフって―――




「桐原さんて…そんな凄い人だったんですか!?」



私には、私にはどうしても普段の超ヨレヨレ謎Tシャツスタイルの桐原さんと、超高級ホテルが結びつかない…!




「あちゃー、本当に知らなかったんだ」



店長が意外そうに呟いて、パクリとロールケーキを頬張った。



「何にも知らないんだね、付き合ってるのに」



「…は?付き合う…?」



「違うの?」



「「違います!!」」




私と桐原さんの声が綺麗にピッタリ重なって、店長は「ほぉ~」とニンマリした。



「息ピッタリ☆」


「うっ…うるさいですよこの青メガネ!」



思わず罵ると、すかさず店長を庇う桐原さん!



「おまえ!師匠に向かってなんつー口のききかた!」


「はい!?桐原さんだってイケすかない青メガネとか言ってたじゃないですか!」


「おまっ…!?しっ師匠の前で余計なことを言うな!!!」




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