甘い恋じゃなかった。
「とにかく違うから。
私が桐原さんを好きとか、ぜっったい、ありえないんだからね!」
牛奥に再度念を押したところで、私の住むマンションの前に到着した。
「送ってくれてありがとう。よかったらお茶でも飲んでく?」
桐原さんも暫くは帰ってこないだろうし。
「…ホント無防備な奴だな」
「は?」
「いや、お茶は遠慮しとくよ。その代わり…」
牛奥がス、と息を吸い込んで、私を真っすぐに見た。
「またこうやって二人で…出かけてくれる?」
…そんな改まって言わなくても。
「当たり前でしょ?私たち友達じゃん」
あっけらかんとそう答えると、牛奥が「はぁぁぁ~」となぜかガックリと肩を落とした。
「友達…ね」
「牛奥?」
「ま、いいや。じゃーな」
そして力なくヒラヒラと手を振って、元来た道を戻っていく牛奥。
…?変な奴。
空を見ると、星がキラキラと瞬いていた。明日も、きっといい天気だ。
桐原さん…まだ片付けしてるのかな。