Dear My Friends
そこで、映像は切り替わる。

目に映るのは誰かの背中。そう、いつも見ている背中。いつもの教室の前の席の。

耳に入るのは、うるさいくらいの蝉時雨。風が揺らす、カーテンの音。何気ない誰かの会話。チョークの音と先生の声。

一気に暑さがまとわりつく。

意識がはっきりした頃、耳に届いた音は終業のチャイム。



夢をみた。いつかの夢。

そう、あれは…夢、だ。



「きりーつ、礼」

クラス委員の号令が響いた。
汗が額を、タラリと伝う。

「サキ、起きて。もう昼だよ」

サオは鞄からお弁当の包みを出す。キレイなピンク色の弁当包みが視界に入った。

あたしは眠い目を擦った。

「そーいえばさぁ、サキは気になっちょー人もおらんかね?」

サオはまだ、あの話の続きが気になるらしい。
好きな人はいないと言った、あたしの話。

「おらん?」

気になる人は、いない…
わけじゃない。

だけど、いると言い切れない。
それにいると言ったその後も、めんどくさい。
誰? とか、なんで? とか、当たり前のように聞かれる。

だけどあたしはよく分からなくて、答えることはできない。
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