Dear My Friends
まだ蝉が鳴き続ける道を、足早に通り過ぎる。
もう見慣れた田んぼ道を横目に、あたしは路を急いだ。

せっかく早起きできたのに、余裕をかましていたら、気がついた時にはもういつもの時間を通り越していたせいだ。

校門を通り抜けると、見慣れた後ろ姿を見つけて、あたしは駆け寄った。

「おはよう、ゲンタ」

「おー! おはよう」

げた箱から上履きを取り出して、蓋をバタンと閉めた。

「サオ、お祭り、行くって」

「ほんね!」

嬉しそうに元太は笑った。
あたしもつられて笑顔になる。

「楽しみだの~」

元太がニヤッと笑う。

「あっ!」

「今度はなんかね?」

「…なんでもない」

サオのやつ、絶対勘違いしてる。
昨日のサオの笑い方は、今の元太のにやついた顔と同じだ。

あたしの思考を遮るように、チャイムが鳴り始めた。

「あっちゃ~。間に合わん! 急がな」

これでもかってくらい、ダッシュで階段を上った。
チャイムがゆっくり、一音ずつ刻む。
階段を昇りきった時、チャイムの最後の音が鳴った。

よりによって、教室は突き当たり。廊下を走ってる間、チャイムの余韻が残っていた。
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