Dear My Friends
どことなく冷たい秋の風。夏を、少しずつさらってく。
吹き終わった頃に、元太は口を開いた。

「なあ。俺、聞きちょーことがあんだけど」

そう言うと、元太はあたしの横を通り抜けて、今度は元太があたしの一歩前を歩く。

「…なに?」

前を歩く元太の背中を見て歩いた。
届きそうで届かない、その微妙な距離がもどかしくて。

元太から香る匂いが、また胸を掠める。



…まるで君がいるかのような。
錯覚になる。



「お前の中おるんって…誰?」

「…、え?」

元太に投げかけられた言葉は、一気にあたしをリアルさの中に押し込めた。

今度は、振り返った元太と目が合った。

「何…言ってんの?」

「誰がおるん? そこに」

「何のこと?」

頭ではわかってる、『何のこと』か。
でも体はしらばっくれる、都合よく。
あたしは何くわぬ顔で、笑ってる。
笑ってる。



元太はまた前を向いて歩き始めた。

「…ねえ、待ってよ?」

もう空は暗くて、元太がよく見えない。
だからか、見えなくなると余計不安になる。
< 44 / 91 >

この作品をシェア

pagetop