Dear My Friends
本当はね、ずっとバレないって思ってた。
気づかれないって思ってたの。
あたしがこんな風に、元太のこと気にしてたこと。

だって誰も知らないから。
あたしの中なんて、誰も知るはずがないから。



「…ねぇ、ゲンタ」

怖い。

足が竦んで動けない。
やっとの思いで出た声も、情けないくらい震えていた。

暗がりから、物音が聞こえない。
かろうじて見える元太のシルエットだけが、そこにあった。

「ゲンタ?」

元太からは、動く様子さえ窺えない。

その静寂に、息が詰まる。
なのに、逃げ出したいのに、足が言うことを聞かない。

あたしはあからさまに、頭を伏せた。

「もういい」

暗がりから元太の声がした。
ずっと遠くにいたのに、あたしの頭の上から。

顔を上げたら、元太は目の前に立っていた。

「もういいが」

元太が寂しそうに笑った。
初めて見た、元太の笑い方。

あたしは何度、元太から視線を逸らせばいいのだろう。
< 46 / 91 >

この作品をシェア

pagetop