Dear My Friends
「あれ? サキちゃんもおったんかね」

翔くんがニコニコしながら近づいてくる。
あたしはおもむろに鞄をつかみ、とっさに立ちあがった。

「あの…。ば、バイバイ。サオ、ショウくん!」

とてもその場にいれなくて、あたしはそそくさと逃げるように教室を出た。

「え!? サキっ!」

後ろの方でサオが呼ぶ声が聞こえたけど、あたしは振り返らなかった。

振り返れるわけがなかった。

…元太が、いたから。



何で元太もいるの?

サオに翔くん来るまで付き合ってって言われたけど、なんで元太も来るの?

なんでよ。
どうして…。



人気のない廊下を、早く逃げ出したい一心で突き進む。
無我夢中で、走り抜けた。

「あ、れ?」

あたしは足を止めた。
それ以上先がなかったから。

目の前には立ち入り禁止の札。
小窓から見える一面のコンクリート。

頭で理解するのにだいぶ時間がかかった。
無意識のせいで、下りるはずの階段を上っていたらしい。

あたしがたどり着いたのは、学校の屋上だった。
< 51 / 91 >

この作品をシェア

pagetop