Dear My Friends
古ぼけたドアノブに手をかけると、軋む音がするだけで開かない扉。

あたしはそこに立ち尽くす。



あぁ、何してんだろ。
…せっかくなら、空でも見たかったな。



「なあ、こげとこで何しよるん?」

突然、後ろから声がして振り向いた。

「何って…ゲンタこそ、何でここにいるの?」

そこには、元太が立っていた。
元太はムッと顔をしかめる。

「お前がシカトするけん」

「は…?」

「お前がショウと時田にだけ、バイバイって言うけんだわな」

「え…それでついてきたの?」

そういえばさっき、元太にバイバイを言わなかったかもしれない。

だからって、それだけで…?

「…それで、ついてきたの?」

「ムカついたんだが!」

少し俯き気味に元太は言った。

顔は見えなかったけど、耳が赤い。

照れ屋なくせに、意地っ張り。
そんな元太を見てるとね、ほら、こんなに笑いがこみ上げる。

自然と笑顔になれるんだよ。

元太の行動が、言葉が、そのまっすぐな目が、心が、すべてが、あたしの心をくすぐるの。

ずっと気づかないふりをしてた。
君はこんなに、特別になっていたというのに。
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