Dear My Friends
「今のあたしにとったら、世界一いい男だもん。…『ヒーロー』なの」

自分で話す口調がまるで、懐かしむように聞こえる。

知らない間に記憶は、こうやって思い出に変わっていくんだ。

「誘わなきゃよかった。今さら、大後悔」



君は来てくれた。

優しいやつだったから、心配してくれたんだと思う。



「彼女との約束があったのに、来てくれたの」



彼女が待ってるから、なるべく早く帰ってもらうようにした。

『ごめん。もう大丈夫だから』

あたしがニッと大げさに歯をみせて笑うと、君は同じように笑った。

『また何かあったら、いつでも言えよ』

『…ゴメンね』

『咲』

『ん?』

『昨日会えなくて言えなかったけど、誕生日おめでとう』



「来なきゃよかったのに。あたしなんかに優しくしなくたってよかったのに」



もし、彼女が引き止めてくれたら。
もし、君が彼女との約束を守ってたら。

もし…、1秒でも何か変わっていたら。

君は…



君は、もう一度笑ってくれたかもしれないのに。
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