Dear My Friends
「『彼があなたのことを大切にしていたのは知ってたから。あたしじゃなくて、あなたにしか埋められない場所が、彼にはあったから』って」



『こんな信頼しきってる2人を、引き裂く方がどうかしてるよね』

彼女は泣きそうな顔して、笑った。



「必死に涙堪えて…言うの。あたし、バカみたいでさ。そんな彼女の前で泣けるわけなくて…」



彼女の顔を見て泣きそうになったけど、泣けなかった。
彼女が我慢してるのに、泣けるわけなくて。

だからあたしは、口角を上げて目を細めた。

『…ありがとう』



「『ありがとう』って、笑って帰っちゃった」



帰り道は、空だけを見て歩いた。
君に会える気がして。

君は、空が好きだったから。

ああ、そうか…。
だからあたしは、空を見上げるんだ。

君といつも見ていたから。



あの日から一度だって、君を想って泣けなかった。

一度泣いたら、君も、あの彼女の優しさも、忘れてしまいそうで怖かったから。

それが、君のこと思い出す度に泣きそうになっても、我慢し続けた理由だった。
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