Dear My Friends
いなくなる…。

誰が?

元太が。

いなくなる?



「あはは。びっくりした?」

ヘラリと笑い、おちゃらけて話すから、緊張の糸が切れたみたいに、あたしは胸をなで下ろした。

「じょーだんだ?」

「ホント」

そして元太は、真面目な顔をする。
束の間、あたしはまた胸が詰まる。

元太はそっと微笑むと、静かに言葉を並べた。

「父さんと母さんが、離婚すんだ」

寂しそうな目を、元太はワザと伏せたように見えた。

「だけん…」、と元太は渋りながら付け加えた。

「俺、母さんについてくわ。父さんには姉ちゃんと弟がおるけん…」

その声は、もう覚悟を決めた迷いのないものだった。

確実に近づいた、あたしと元太の分岐点。
それは、君がいなくなったあの日より、現実味のないもの。

ヘラヘラ笑ってたかと思えば真剣な顔して、何を言い出すかと思えばこんなことを。

「…ウソ」

「ウソじゃね」

だからあたしは言い切ったのに、元太は、それすら否定した。



嘘じゃない。
元太が、いなくなる。
ここから…、いなくなる。
< 73 / 91 >

この作品をシェア

pagetop