Dear My Friends
『なんかや、それ…』

『うそ…』

翔くんは立ち上がるなり、信じられないという表情を浮かべていて、サオは泣きべそ顔になっていた。

そこに変に冷静な自分がいて、なんだか悲しかった。



『ねぇ、ゲンタ』

その空気を打ち破るように、あたしが声を出すと、みんなの視線が私に集まった。

『あたしは、ゲンタがいなくなったら寂しいよ』



あの時言えなかったこと。
ちゃんと、言いたかった。



その時の元太の笑顔が、泣きそうだったことを覚えてる。



サオはさっきから、あたしと繋いだ手を離さない。

そのおかげで、あたしはここに立っていられるのかもしれない。

「…ホントにゲンタ、おらんなるんよね」

小さな声でサオが呟くと、「おぉ」と曖昧に、元太は返事をした。



ホント、まだ全然実感が湧かない。

――…まだ、湧かない。



「もうじきバレンタインデーだよ。ゲンタ」

「なんかやいきなり?」

「あたし、せっかくケーキ作るから、ゲンタにもあげようと思ってたのに」

声が大きい。
あたしの声がやたらと、はっきり聞こえる。

「なんね、それ。…俺、ふつーにショックだがや」

元太は目線を下に落とした。
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