すれ違い天使Lovers
類君のお見舞い
サブノック戦から三日後、全身の気怠さにとらわれながら意識を取り戻すと、目の端に玲奈が見える。
「玲奈……、さん?」
「ミラ! 目が覚めたのね?」
「はい、私は確かサブノックとの戦で。玲司は、玲司は大丈夫ですか!?」
起き上がり焦りながら聞くミラを玲奈は落ち着かせる。
「焦らなくても大丈夫。ミラが守ってくれたお陰で無傷よ」
「よかった……」
ホッとしているミラの姿を見て玲奈は嬉しくなる。
「ミラ、貴女本当に家族を命懸けで守ろうとしてるのね。ありがとう」
「そんな、礼なんて言わないで下さい。私はあたり前のことをしているまでです。玲司は大事な家族ですから」
ミラの行動理由が予想していたものと同じで、心が温かくなる。
「ミラの気持ち、凄く嬉しいわ。でも、一つだけ忠告させて。玲司の為に特攻してくれた意味は分かる。けれど、ミラ。貴女も私の大事な娘なの。命を粗末にしてはだめ。いいわね?」
大事な娘と言われるとミラも黙って頷くしかない。申し訳ない気持ちと照れとで黙り込んでいると家のチャイムが鳴らされる。
「ごめんなさい。ちょっと出てくるわ」
ミラに断り部屋を後にして一分もしないうちに玲奈が息を切らせ急いで戻ってくる。
「ミラ! 大変よ!」
「な、なんですか? また悪魔の襲来ですか!?」
「違うわよ! お見舞いよお見舞い! 超イケメンの類君が貴女のお見舞いに来てるのよ!」
「類? ああ、あの子か」
「ああって、リアクション薄いわね。通していいの? それとも断る?」
「別に断る理由もないので大丈夫ですよ」
「分かったわ、伝えてくる。二人っきりにしてあげるから仲良く、ねっ」
意味深な『ねっ』の意味も理解できず待っていると、ドアがノックされ返事をすると恐る恐ると言った雰囲気の類が入ってくる。
「こんにちは、病床のところごめん。体調は大丈夫?」
「こんにちは、平気。もう万全」
「そっか、じゃあ一安心だね。あ、コレ口に合うか分からないけど、クッキー」
「ありがとう」
類はクッションに座り、ミラはクッキーの箱を受け取ると無言になる。
(特に話すこともないんだが、コイツはなんで帰らないんだろうか?)
疑問に感じながら見つめていると、類が話し掛けてくる。
「あの、前の約束覚えてる?」
「約束? 通学のこと?」
「そうそれ。ミラさんいつくらいから登校出来そう?」
「普通に今からでも可能だが?」
「いやいや、さっきまで昏睡してたんでしょ? 今日はちゃんと休んだ方がいいって」
「そうか、分かった。じゃあ、約束は明日果たそう。それでいいか?」
「うん、ありがとう」
(人間は一緒に通学することにつき、こんなにも真剣になるものなのか。それともやはり好意を持たれてるのか? しかし、学校の連中とは違って全然口説いてこないし、よく分からないな)
ミラの視線をどう受け取ったのか、類はおもむろに立ち上がる。
「静養中に悪かったね。僕、もう行くよ。学校サボってるからね」
「そうか、お見舞いありがとう」
「いえいえ。それより、あの、これからも仲良くして貰ってもいいですか?」
「ん? もちろん。明日、登校する予定だし」
「ありがとう、じゃあまた明日。お大事に」
嬉しそうに去って行って類と入れ違いですぐに玲奈が入ってくる。
「ちょっとミラ、類君帰るの早くない?」
「学校サボってるからと言ってましたら、たぶん急ぎだったんだと思います」
「なるほどね。で、どうよ? いい感じになった?」
根掘り葉掘り聞いてくる玲奈に戸惑うものの、一から十までちゃんと説明すると明らかに残念そうな顔をされていた。