何度でもあなたをつかまえる
母親は、わざわざぴしゃりと音を立てて障子を閉めた。
……お行儀悪いですよ……なんて、さすがに言えないよな……。
あいつが起きてしまう……。
「……とりあえず……移動しましょうか。」
俺の提案をどう聞いたのか、母親は俺を睨み付けるように見てから、つーんと顎を上げて、くるりと踵を返した。
ついてこい、ということだろう。
さすがに上半身裸のままだとマジで風邪をひいてしまいそうだ。
パジャマの上衣を取ってきて着てから母を追うつもりで、障子をそっと開けた。
……うわぁ。
何てゆーか……乱れているのは寝具だけじゃなかった。
空気が……澱んでいるというか……ハッキリ言ってしまえば、臭い。
成人男子2人分のいろんな体液が混じり合った、何とも言えない匂いだ。
こりゃ、単に一緒に飲んでて寝てしまっただけ……なんて言い訳が通用するとは思えない。
完全にヤッてました……ってバレバレだろう。
あーあー。
いや、天を仰いでいる暇はないか。
慌てて自分のパジャマの上衣を探す。
……げ。
雅人が……千歳のパジャマを蒲団のように身体に覆って眠っている……。
寒くなったのかな。
蒲団をかけてやるからさ……それ、返してくれないかな?
そーっとそーっとパジャマを引っ張って、かわりに蒲団をすっぽりとかぶせた。
心なしか、雅人の寝顔が幸せそうに穏やかになった気がした。
……無意識に、こいつは……どうして……こんな……
こんな時なのに、千歳の心が弾んでしまう。
たまらなく、かわいい。
ほぼ無意識に、雅人の白い額に口付けた……ら……。
背後に異様な気配を感じた。
振り返ると、母親が目を見開いて立っていた。
「……出て……行きなさい……。」
血の気のない顔色をした母親が、震える声でそうつぶやいた。
「……お母さん……」
さすがに、今のを見られてしまっては……終わりだ。
いや、でも。
こいつを守ることは……できるか……?
「すみません。でも、ご覧の通り、俺が一方的に、雅人くんを、」
最後まで言うことはできなかった。
ピシャリ
と、軽い小さな音を立てて、母親は千歳の頬を打った。
……お行儀悪いですよ……なんて、さすがに言えないよな……。
あいつが起きてしまう……。
「……とりあえず……移動しましょうか。」
俺の提案をどう聞いたのか、母親は俺を睨み付けるように見てから、つーんと顎を上げて、くるりと踵を返した。
ついてこい、ということだろう。
さすがに上半身裸のままだとマジで風邪をひいてしまいそうだ。
パジャマの上衣を取ってきて着てから母を追うつもりで、障子をそっと開けた。
……うわぁ。
何てゆーか……乱れているのは寝具だけじゃなかった。
空気が……澱んでいるというか……ハッキリ言ってしまえば、臭い。
成人男子2人分のいろんな体液が混じり合った、何とも言えない匂いだ。
こりゃ、単に一緒に飲んでて寝てしまっただけ……なんて言い訳が通用するとは思えない。
完全にヤッてました……ってバレバレだろう。
あーあー。
いや、天を仰いでいる暇はないか。
慌てて自分のパジャマの上衣を探す。
……げ。
雅人が……千歳のパジャマを蒲団のように身体に覆って眠っている……。
寒くなったのかな。
蒲団をかけてやるからさ……それ、返してくれないかな?
そーっとそーっとパジャマを引っ張って、かわりに蒲団をすっぽりとかぶせた。
心なしか、雅人の寝顔が幸せそうに穏やかになった気がした。
……無意識に、こいつは……どうして……こんな……
こんな時なのに、千歳の心が弾んでしまう。
たまらなく、かわいい。
ほぼ無意識に、雅人の白い額に口付けた……ら……。
背後に異様な気配を感じた。
振り返ると、母親が目を見開いて立っていた。
「……出て……行きなさい……。」
血の気のない顔色をした母親が、震える声でそうつぶやいた。
「……お母さん……」
さすがに、今のを見られてしまっては……終わりだ。
いや、でも。
こいつを守ることは……できるか……?
「すみません。でも、ご覧の通り、俺が一方的に、雅人くんを、」
最後まで言うことはできなかった。
ピシャリ
と、軽い小さな音を立てて、母親は千歳の頬を打った。