何度でもあなたをつかまえる
お正月休みのハワイを旅行?

それって……どういうことかしら。

「芸能人みたいなこと、して……。そこまで曲、売れてないと思うんですけど……。」


重ねてそう尋ねたかほりに、東出は多少イラッとした。


まったく、このお嬢さまは……。

懲りないにも程がある。

どうして、あのフェロモン過多の野獣を放置しておくんだ。


「かほりさん。ちょっとは危機感を持ったほうがいいな。……あれ、たぶん、やばいぞ。」

東出はかほりのために本気で怒っている。

でも、かほりには苦笑しかできない。


「……雅人のほうが……女性に夢中のようでしたか?」


想像したくない。

でも、今のこの状況を冷静に分析すると……出てくる答えは自ずと限定される。

かほり以上に愛する女性ができた?

考えるだけで、全身に震えが走った。


東出は、顔をしかめて頭を振った。

「ああ、そうじゃない。わかるだろう?かほりさんとは違う。もっと冷めた目で、1人は反吐(へど)が出るほど甘えてやがって、もう1人に対してはぞんざいで……」


「もう1人?え?女性と2人きりというわけではないのですか?」

お友達同士のグループでハワイ旅行ということかしら?

キョトンとしてるかほりに、東出は軽く舌打ちした。

「知るか!……俺が見たのは、頭の悪そうなアイドルみたいな女にうるさく言い寄られて寝たふりしてたあいつと……その子がトイレに立った隙に、すぐ背後に座ってたケバい年嵩な女が振り返って、あいつに熱烈なキスをかましたところだけだ。」

東出の落とした情報は、かほりの想定外だった。


え……?

どういう意味?

えーと……二股?……ってこと?


呆然としそうになったけれど、他のメンバーが戻って来たようだ。


「俺の見間違いか、人違いだといいがな。……って、そんなわけないけどな。……周囲の人間に聞いてみたほうがいい。美人局(つつもたせ)とか、ヤクザの女とかかもしれん。じゃあな。」

それだけ言って、東出はスタスタとかほりから離れて、クルーゲ先生の隣に腰を下ろした。


……この状況で……そんなこと言われても……どうしたらいいの?
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